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物流コストの上昇と働き方革命の日本経済への影響 [経済・社会]

物流コストの上昇と働き方革命の日本経済に対する影響

日本の物流コストの著しい上昇や、働き方革命などは、政策のやり方を間違えれば日本経済の息の根を止めることになる。

しかし適切に対応すれば、逆にデフレから脱却する画期的な出来事として記憶されるだろう。

この二つの出来事は、長く続いたデフレが最終段階まで達し、これ以上の付加価値の減少(利益の減少、所得の減少など)が続けば、企業が存続できない、または、労働者が生活を維持できない、所まできたため、その反動として起こった現象である。

しかしながらお粗末な日本政府は、その本当の意味や、重要性が皆目分かっておらず、今の生産至上主義に片寄った政策をそのまま踏襲しようとしている。

そのまま続行すれば日本経済はより苦境に陥ることになる。すなわちデフレが深まり、企業も労働者も、産業全体がさらに貧窮し、最終的に成り立たなくなるのである。

政府の肝入りの働き方革命や、物流コストの上昇は、日本の生産能力が既に人的に限界に達したことからきている。

デフレ下における生産偏重主義(生産増大主義)が、すなわち、低金利による企業への助成やインフラ重視の公共投資、生産を刺激する各種助成金の創設など(アベノミクス、小泉政権下の経済政策、バブル崩壊後の莫大な公共投資政策)が、どんどん生産量を伸長させ、、それに伴い労働需要が増え、日本の人的限界を越える所まで来てしまったのである。

しかもデフレ下の生産偏重は、消費への資金量を不足させるため、生産の増大に応じて、収益が逓減する収益逓減の法則が働き、付加価値が逓減し、所得が低下するため、労働者の労働条件が悪化する一方であり、生活の質も劣化した。

それに対する救済として労働者の長時間労働や低賃金に対する対策や運送業界の運賃の値上げなどの行動が取られた。それはデフレに対する正しい経済的な反動である。

特に物流コストの上昇は、自然な経済的自律行動であり、画期的な出来事である。我々、そして日本政府は、これに応じた適切な政策を取っていけば、デフレを解消する契機となるであろう。

言い換えると日本経済は落ちる所まで落ちてしまい、ようやく反動の兆しが出てきたのである。ここまでくるまで、とことん日本の経済政策は間違っていたのである。

(この責任は、政治家、官僚、財務省、経済学者、新聞などのメディア、日本の教育システムなどにあるだろう。)

特に消費税の8%への引き上げが、再び大きな消費不足を招き、供給過剰から(別に生産者が増えているわけではない。生産者も減っているが、それ以上に消費が減少しているという意味)低価格競争、過剰サービス競争を余儀無くされ、付加価値のより一層の低下により、さらなる長時間労働と低賃金を強いられているのが現状である。

政府はようやく民間労働者の窮乏、疲弊に対し改善しようと働き方革命なるものを提唱し、あたかもその責任は企業にあるとでも言いたいかのようだ。

実際の責任は、日本政府の政策にあり、低金利政策や、生産刺激策、公共投資政策、さらに消費税引き上げにより、デフレを促進させ、この30年間で、多くの優良企業を失い、日本の産業を劣化させ、さらには多くの労働者を窮乏化せしめたのである。

また物流コストの上昇も、日本のあらゆる産業に波及し、その影響は絶大だ。すべての産業が価格を上乗せできるとは思えない。運送業界だけが、増益になっても、他の産業が減益では意味がない。

特にヤマトを代表する物流コストの上昇は、デフレ下における消費不足から、地域の小売業者、スーパーマーケット、専門業者などが淘汰され、ネット販売の占める割合が大きくなったこと。

さらに携帯の普及により、手軽にネットで買えること。それがここ4、5年で限界を超え、猫もしゃくしもネットで、通販で買わざるを得なくなった。それがネット販売の急速な増加につながり、宅配が、手一杯になったのである。

しかもネットや通販に特に顕著なことは、価格競争が非常に激しいため、運賃を無料近くにする過剰サービスが横行していることだ。

そのため送料が極端に安く設定されていたことが、このような自衛策となって現れてきたのである。

しかし運送業者のこのような運賃の値上げや、大きな物を敬遠する風潮は、日本の産業全体で大きな負担となる。特にデフレ下では、製品価格や、商品価格、サービス価格に転嫁することが難しい業界が多い。

そのため、運送業界だけが、何とかしのいでも、他の産業がマイナスに陥れば、日本全体としてマイナスになり、デフレがさらに深まることになる。

デフレ下で付加価値が少ない市場では、どうしても数の販売で切り抜けようとするため、運送コストの増加分を消費者が担えればよいが、それができない産業では、結局、運送賃を自己の商品価格の値引きという形で担うことになるだろう。

現在政府がなおも行おうとしている、労働移民の増加政策や、最低賃金の引き上げ、消費税の10%への引き上げは、より一層、生産量を増大させ、付加価値を低下させていくため、デフレを推進することになり、デフレから脱却する気運を一気に潰す愚挙である。

上に述べたものが、働き方革命や、物流コストの上昇に対する功罪の罪の方である。

デフレからの脱却には、単位辺りの付加価値が増加することが大事であり、それに連れて販売量が逓減することが重要である。(デフレ下では、低価格製品が生産過剰な状態にあるため、普通の価格の製品が増えれば、低価格品の製造が押さえられ、販売量が減少する。)

すなわち、消費の増大に合わせて、生産量が調節され、付加価値が増えていく状態が必要である。

デフレ下の労働曲線は、右下がりになっている。労働需要の増加に伴って、賃金が下がっていく図である。

現在のような労働力が限界を迎えている状況では、賃金を上昇させるためには、消費者の負担を直接軽減させ、消費にゆとりを持たせ、付加価値の大きい商品の購入に向かわせる必要がある。

それにより、低価格品の生産量が減少していき、労働需要を適度な水準に戻すことができる。

ヤマトを代表する運送業界の今回の取り組みは、運送料を値上げすることにより、運送量を減少させ、企業の付加価値を上げ、利益を確保することに成功した。

デフレが30年近く続いている中で、運賃の値上をすることは非常に難しく、他の業界ではすぐ競争脱落を意味する。

そのため今回のヤマトなどの運賃値上げの意思決定は、画期的なものであり、デフレ対策の正しい方策と言えよう。

逆に言うとヤマトのような個配大手であれば、送料を上げても売上が落ちないからできたとも言えよう。

これに対し、政府の働き方改革の一つとして、最低賃金の連続の引き上げは、同じように見えて違う方向に行く。

企業への負担となる最低賃金の引き上げなどの賃金引き上げ要請は、企業の製造コストが上がり、付加価値が減少するため、企業はより一層生産ドライブを強める方向に動く。売上を確保しようとするため、価格競争に陥る可能性が高いのである。

現在でも、労働需要が逼迫しているにもかかわらず、所得が上がる気配がない。企業はなお低価格競争を続けざる負えない状況なのである。

ここにおいてさらに、デフレを過度に深刻化させる消費税引き上げを敢行するなら、さらなる生産ドライブがかかり、価格競争による付加価値減から、最低賃金の引き上げが、企業に大きな負担をも垂らすことになる。

デフレ下において、所得を上げるには、より付加価値の高い製品に移行して、生産量を下げる必要がある。
(デフレ下では、低価格製品が過剰に流通しているので、低価格品から普通の価格品への移行させて、適量に流通させるという意味)

そのため先ず始めに消費を引き上げ、企業の低価格競争を和らげる必要がある。

消費の引き上げには、消費者に対して直接負担を軽くする方法や直接補助金を与えるのがよい方法である。

最低賃金の引き上げを、企業の負担で促すより、国が負担すれば、良いだけのこと。消費税の引き下げ、減税、いまさらと思うかもしれないが子供手当、差別だと言うのであれば、独身手当でもかまわない。

給食費無料より、給食手当を保護者に与えるの方がよい。教育費の無償化より、学校手当とか、教科書の無料化より、教科書手当の方がよい。

このような直接、消費者の手に入る手当や補助金がデフレの場合、保育所を作るより、また教科書を無料化するより効果がある。

低金利より、ある程度の金利を維持した方がよい。個人の担保を増やし、消費を促す必要があるからだ。

消費税を引き下げ、個人消費を促し、企業の低価格競争を和らげ、付加価値の高い製品への移行を促す。

手っ取り早くできる方法としては、雇用保険の満額支払いと期間の延長だろう。

これにより労働力の供給量の低下が、生産量を逓減させ、なおかつ消費額は維持されるからである。

付加価値が減じ、資金が実体市場から減少していくデフレ圧力を和らげるには、先ず、消費に対する助成を行い、製品に対する価格弾力性を緩める必要がある。

そして低価格品の生産過剰を是正するため、市場から労働力を減少せしめ、消費を維持するための一つの方法として、雇用保険の満額支払いと期間の大幅延長が良い。

雇用保険の満額支払いは、実体市場から、労働者を減少させ、消費額を落とさないため、デフレの解消にはうってつけのものになる。

物を作るためのお金より、物を買うためのお金を増やすことがデフレからの脱却には必要なことなのだ。

企業は余計な人員を整理し易くなり、より付加価値の高い製品に軸足を置き易くなる。労働者は、失業しても今までの賃金はもらえるのでそれほど窮乏することはない。

消費を維持して、長時間労働や低賃金労働を押さえることができる。
全体の生産量を調節でき、労働量を減少し、企業の付加価値が上がり、所得が上がっていくことになる。

労働者は、職場から去ることによって、全体の労働量を減らすことになり、消費は、保険料を満額もらうことによって維持される。

企業は、労働量の削減により、製造コストが下がり、付加価値の高い製品にシフトすることができる余裕が生まれる。

政府が最低賃金等の労働条件の改善を目指すなら、これ以上の無用な公共投資や、不必要な生産刺激策、消費税増税策を止め、企業に付加価値の高い製品製造や販売に重心を置くゆとりをもたらさなければならないのである。

今の政策だと、企業は人手不足から、賃金を引き上げ、製造コスト増からさらなる値引き販売による生産増強路線を突っ走りかねない。それはさらなるデフレの深刻かを告げるものである。

デフレあくまでも、消費の不足が原因であり、それによって低価格競争が起こっている。消費の拡大を、企業ではなく、国や、地方自治体の消費税の引き下げや、個人負担の軽減など、消費者の負担を直接軽減する施策がデフレを解消していく。

そして消費の増大が、企業の余裕を生み、高付加価値製品へのシフトが始まる。低価格品一辺倒の生産増大が改められ、消費者の懐具合に応じた、製品群が作られ、品揃えが豊富になっていく。それがデフレからの脱却の道筋である。

物流コストの上昇や、最低賃金3年連続引き上げなどのデフレに対する反動を、潰すような愚挙(消費税の引き上げ、移民労働者の増加策、)をしてはならない。


追記:今回主題が悪かったのか、時間がかかってしまった。反省。

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