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デフレ下の諸物価の高騰と消費税増税の類似性 [経済・社会]

デフレ下の原油高による諸物価の高騰と消費税の増税の類似性

デフレのような消費に回る資金が大きく不足している経済では、輸入材の高騰による物価高は、その商品の消費に対して使われる資金が大幅に増えることを意味する。
そして資金が今まで以上に値上がった原油関連商品に使われるため、それ以外の商品の購買額が減ることになる。全体の購買額が変わらない中で石油関連商品の購買額の割合が増えるため消費が減少しているのが今般の経済事情である。

現在の物価上昇は需要が旺盛でその結果供給価格が上昇しているのではなく、単に原油価格の上昇により供給価格が上がったものであり、需要が停滞している中での出来事である。消費が不足している時に輸入材が上がったことによるさらなる消費減少なのである。

これは、資金不足のデフレ型の不景気に過ぎない。

現在多くの方がインフレと言っているのは、単なる物価の上昇であり、本来の資金量が生産量より大幅に多い状態のインフレとは違うものである。現在は資金量が生産量より大幅に少ないデフレにおける物価上昇である。

生産能力に比べて大幅に資金が少ない経済状態であるデフレでは、消費者の価格弾力性が極端に高いため、企業の低価格競争が激しくなっている。それ故慢性的な原価高の利益率の低い脆弱な環境に陥っている。

それ故わずかな物価上昇が、大きく消費減をもたらすことになる。消費者物価が便乗値上げによって大きく上がり、その結果需要と供給のギャップにより不景気になるのとは違うのである。このような場合の物価上昇は賃金の上昇も上乗せしたものになるが、デフレ型の不景気では物価上昇になんら賃金が上乗せされず、利鞘が下がるため賃金も下がるのである。

企業卸物価の上昇より、消費者物価の上昇の方が少ないことからこのような景気下降であることがうかがえる。この卸物価の上昇や消費者物価の上昇には、労働者の賃金上昇や、企業利益の増分を見込んでいない。そこのところが正常な経済やインフレ経済とは違うところである。

普通の正常な経済であれば企業卸物価の上昇より消費者物価の上昇の方が大きくなり、価格の上昇を需要が越えられず、需要減が生じそれが供給減となり、不景気になるものである。そこには賃金上昇や、企業利益の増分が伴う。

正常な経済やインフレ(ここで言うインフレは単なる価格上昇のことや、ケインズの言うインフレギャップではなく、生産量に対して資金が非常に多くなっている、所得線が45度以上の状態を指している。)の経済状態であれば、このような原油のような輸入資材の値上がりは、先ず卸売物価の上昇が起こり、続いてそれを上回る消費者物価の上昇が起こる。十分に企業がそのコスト上昇分を製品に転嫁することができる。

その結果、需要が供給を越えられず、生産調整が始まり不景気になっていくのである。それ故このような状態の時、不景気は十分な価格上昇がなされてから現れる。

しかしながら日本の場合、デフレ状態にあり、消費者物価の上昇が企業卸物価より少なくなっている。それはデフレで既に需要不足の状態であるため、企業が転嫁しなければならないコスト上昇分を、価格に十分反映させることができないことを物語っている。

このような場合十分に価格転嫁ができないため、不況が直ぐにやってくる。企業はこの苦境を乗り切るため利鞘を削らざる負えず、賃金削減、リストラ、経費削減をすることになる。

企業卸物価の上昇より消費者物価の上昇の方が少ない状況では、企業が利鞘をさらに抑えている状況が見て取れよう。賃金を下げ、正社員を非正規雇用にするのが理にかなう経済状況にあるのだ。これに反する最低賃金のアップや日雇い派遣の禁止などは、より倒産や犯罪者を増やすことになる。防波堤にはならない。

今現在政府や経済評論家は自分たちの政策の悪さを棚に上げ、企業が賃上げをしないのが悪い、正規雇用をしないのが悪い、日雇い派遣業者が悪いなどと責任転嫁しているが、デフレではそれが当たり前の企業の理にかなった経済行動である。

原油高による物価の上昇は逆に資金が産油国へ流出し、企業の利鞘が圧縮されている。このような時最低賃金アップや正規雇用者の増加は不可能である。

現在の原油高による物価の上昇は日本経済を急速に悪化させている。このような状態が長く続き資金の流出が続くと所得線の角度がさらに下がる可能性がある。角度の下降はデフレスパイラルに入ることを意味しより深刻なデフレ状態に陥るだろう。

今巷で喧伝され、俎上に上っている消費税アップは、原油高による物価の高騰とよく似た現象を引き起こすものである。しかし深刻度は雲泥の差である。消費税アップは資金と生産量の比率を変えるものであるからである。

デフレは生産量に対して資金量が大幅に減っている経済状態であると定義した。それは所得線が45度より角度が下がったものとして書き表している。生産量と資金量の比率が変化しているのである。

デフレ下の消費税増は、例えば3%上げるとすると生産量に対して資金が3%減少し少なくなることを意味している。これは、所得線の角度が確実に3%低下するのと同じことであり、よりデフレが深刻化することを物語っているのである。

現在の原油高は消費が伸びないので、企業がその原油高の上昇分を吸収しようとやっきになっているため、産業や企業によって上昇度が違う。全体の消費者物価上昇はまだ2%に達していない。このような物価上昇による消費減は、所得線の角度下げず、デフレ所得線(45度以下の所得線で貯蓄量以下の角度を持つ)に応じて下がって行く。
消費者はできるだけ価格の安い物を求め、企業はそれに答えられるよう価格を安くする。激しい競争をしながらデフレ下の均衡を目指すのである。
この時はまだ資金と生産量の比率は変わらない故デフレスパイラルには入らない。

デフレの所得線上での需要減による激しい供給減にすぎない。それでも正常な経済の時の落ち込みより激しい供給減をもたらす事には変わりがない。

このようにデフレ下の物価高は、理論的にも実際にも恐ろしい供給減を招く。それは資金が市場から産油国に流出するから起こる現象である。

これと同じような現象がもっと激しく起こるのが、消費税の増税である。

消費税の増税がなされるとその上昇させたパーセント分だけ所得線の角度を低下させる。企業や国民は消費税の上昇から誰も逃げることができないため、デフレスパイラルに入り、デフレの深刻度が増加することになる。資金の底に来るまで再び角度が下降しその間循環的に経済が急速に縮小するのである。

日本が消費税を3%から5%に上げた時から経済の収縮が激しく起こり、2千3年頃の輸出により供給減が解消されるまで続いたのである。しかしその所得線の角度は上昇する事なく続いており、今また再び輸出減と、原油高による物価上昇により供給減が激しくなっている。消費税をデフレ下で2%上げただけでこれだけの破壊が起こるのである。低所得化の恐ろしさは社会のモラルを崩壊させつつあることから明らかであろう。

現在の原油高による物価上昇がもたらしている苦境から、
これから先どのようなことがあっても、デフレ状態が続く限り消費税増はやってはいけないことであり、もし行われればどの程度の被害か想像がつくであろう。

一言主 http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/デフレ下における消費税増税の愚参照
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論参照

 


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